オタク声楽家の「サブカル・オペラ小噺」
③今昔観劇物語
皆さん、こんにちは。
地道な筋トレが功を奏したのか、自粛太りを回避して喜びを感じている、寺田穣二です。
前回前々回と、ライブコンテンツとオペラを照らし合わせながらお話してきたこのシリーズ。この3回目を以て、ひとまずの締めとさせていただきます。
先日、Youtubeにて配信された、ラブライブ!サンシャイン!!4thライブを観ました。こちらは一昨年、東京ドームにて2日間にわたり行われた盛大なライブイベントで、Aqoursというグループにとってメモリアルな会場ということもあり、出演者、観衆ともに大いに熱狂しました。
特筆すべきは、その構成。オーケストラがついていたのです。
ライブのために編曲された管弦楽曲、アニメで流れた思い出深いサウンドトラックなどが演奏され、普段のライブでは得ることのできない、一層深い感動が繰り広げられました。また、劇伴の作曲者が指揮を務めていて、楽曲に豊かな解釈が加えられておりました。ライブパートで盛り上がっていた観衆も、オーケストラパートでは静かに耳を傾けている景色が印象的でした。
さてここで、このライブの編成を見てみましょう。
出演者、オーケストラ、指揮者、裏方さん…おや、何かとよく似た顔ぶれですね?そう、オペラです。
序曲に始まり、オーケストラが奏で、出演者が舞台でパフォーマンスをする。これはまさしく、現代における舞台芸術の実現といえるのではないでしょうか?オペラが生まれた300年前のある日から、奏者と聴衆の関係性は脈々と受け継がれているのです。
オペラと現代ライブコンテンツの違いは、マイクなどの音響機材を介するか否かが大きいですが、聴衆からしてみれば、享受する体験や感動は、さほど差は無いように思えてなりません。文化芸術の華であると同時に、社交と娯楽の最先端として、数多の時代を駆け抜けてきたのです。日常では体験しえないような、すごいものを観に足を運び、感動を共有する…観劇、鑑賞の在り方は、今も昔も変わらずにあり続けているのではないでしょうか。
現代ライブコンテンツは、昨今こぞって新しいものを創り上げています。構成、演出、電飾、舞台装置などなど…常に観客を魅了するために、出演者やスタッフは日々アイディアを出し、コンテンツの未来を模索しています。
では、オペラはどうでしょうか?実はオペラも、進化を遂げているのです。いわゆるオーソドックスな演出では、表現しうる世界の幅に限界が生じてしまう、という考えがいつからか芽生え、「読み替え」演出が生まれました。従来の時代や設定などを一旦廃し、新たに演出で作品を創り上げるというものです。この流れは、新たな解釈や体験を生み出しますが、騎士や貴族であるはずの人物がTシャツを着ていたりするので、聴衆や評論家の間で度々議論が生まれますが、舞台芸術の明日を模索する動きとしては好ましいように思う次第です。是非、機会があれば、読み替え演出の公演に足を運ばれてはいかがでしょうか?
日本では、マンガやアニメ、ゲームなどのサブカルチャー・コンテンツが非常に盛んで、それらから多くの産業が派生しています。舞台芸術に関しても同様で、今日におけるライブコンテンツが、観劇鑑賞における主なものとして定着しています。オペラから始まった舞台観劇が、こうして現代に受け継がれている様を見ると、私はこの上ない喜びを覚えます。どうか、この美しく素晴らしい舞台芸術の流れが、この先も発展していくことを願っています。
それでは、また次回お会いしましょう!