あんまり注目されない、でも面白い、本気出せば主役だってくっちゃうぜ!な名脇役たちを救済する夢のシリーズ☆
『名脇役シリーズ』第5弾はウンベルト・ジョルダーノ作曲
《アンドレア・シェニエ》!!
初演:1896年3月28日ミラノ
台本:ルイージ・イッリカ
ジョルダーノってどんな人?
→耳馴染みのない作曲家かもしれませんね。初期の作品はなかなかヒットに恵まれませんでしたが、今回紹介する《アンドレア・シェニエ》で大成功を収めました。
さてさて、では今回取り上げる《アンドレア・シェニエ》とは?
→アンドレア・シェニエとは、フランス革命時を生きた、実在する詩人です。革命に一役買ったと言われていますが、「国家反逆罪」を宣告され、恐怖政治が終わるわずか3日前にギロチンによって処刑されてしまいます。そんなシェニエの短い生涯に、伯爵令嬢マッダレーナとの恋を絡めた、切なく、それでいて情熱的な作品です。
実は、現在(2020.7.29)筆者はこの《アンドレア・シェニエ》を絶賛稽古中であります!こんな時期ですけどね、こんな時期ですが「オペラが好き」という気持ちは止められないですね‥‥。感染予防にはこれでもか!というくらい気を使っているのでご安心を。
しかしなぜこの時期にこのオペラなのかというと、コロナに苦しむ今と、この恐怖政治の時代の「緊張感」が妙にリンクするからです。「誰も信用できない」、今でしか体感できない「恐ろしさ」をじんじん感じながら、このオペラの奥深さに触れている現在です。
さて、今回紹介するのは私が演じている役、
ベルシ
一度相関図を見てみましょう。
こちらは1789年、第一幕、コワニー伯爵邸でのパーティーの相関図です。 ベルシはマッダレーナに仕える侍女です。
そして第二幕からは5年後の1794年。革命が起き、社会の様子は様変わりします。
コワニー家は革命の炎に飲まれ、マッダレーナの母、伯爵夫人は亡くなります。マッダレーナは侍女のベルシと姿を消すのでした。
コワニー家に仕えていたジェラールは革命政府の高官となり、密偵を使い、消えたマッダレーナを探します。
そんな中、マッダレーナは密かにシェニエに手紙を送り、二人の間には愛が生まれていました。
ここで、ベルシに注目してみてください。なんと5年後のベルシは「娼婦」になっています!何があったのでしょうか?マッダレーナのアリアから一部紹介します。
母は私の部屋の扉のところで死にました。私を守ってくれたのです。それから夜遅くまで私とベルシが彷徨っていると、行く先に恐ろしい光が、私の家が燃えていたのです。私は一人ぼっちで何も持っていません。飢え、不幸、欠乏、危険が私を襲います。私が病気で倒れると、あの善良で純粋なベルシが、その美貌を売り物にしたのです。私のために。私は愛する人々を不幸にするのです。
うわぁ、悲しいなぁ。いかに悲惨な5年間だったのかが分かりますね。コワニー家が没落した後も、ベルシはマッダレーナに付き添い、マッダレーナの為に、娼婦へと身を落としたのです。誰かのためにここまで出来るベルシは本当にすごいです。優しくて、強い女性ですね。彼女を主役でオペラ一本書けるのでは?と思ってしまうほど、かっこいいキャラクターです。
ベルシを演じる上で、考えることはたくさんあります。自身の経験が浅く、理解が追いつかない部分もあります。
「誰かを守るために、自分を犠牲にするとはどんなことなのか?」
冒頭に書いた、「今との共通点」に戻りますが、このオペラのこのテーマは、今の時代だからこそ、考えさせられるのかもしれませんね。
本番まで後僅かですが、テーマに深く向き合ってみようと思います。
小声)今回フライヤーデザインを担当させてもらったので、載せちゃいます/////
次回予告
→お人好し?なあの人を‥‥